短鎖脂肪酸

更新日:8月22日

短鎖脂肪酸とは、腸内フローラがルミナコイドを食べて、作り出す有機酸の一種です。

人間の腸内には、数百種以上、100兆個以上の腸内常在菌が生息していますが、その中のいわゆる善玉菌、日和見菌と言われる大腸の常在菌が、ルミナコイドを発酵させ、短鎖脂肪酸を産み出します。




これらの短鎖脂肪酸は、腸や体のエネルギーになったり、大腸の腸管粘膜を修復したりします。また、消化吸収や排便を促すほか、脂肪の蓄積を抑えたり、炎症を抑えたり、私たちの体を強くし、守る作用など、私たちの健康にとって様々な良い働きをしてくれることが分かり、最近大変注目されています。

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主な短鎖脂肪酸は、「酪酸」「プロピオン酸」「酢酸」です。


短鎖脂肪酸のうち、酢酸やプロピオン酸の一部は大腸で消費されますが、その殆どが大腸の粘膜から吸収され、血流に乗って全身へ流れます。そして肝臓や筋肉、腎臓などに運ばれ、エネルギー源や脂肪を作るための材料になります。


一方、酪酸はその多くが直接、大腸の粘膜上皮のエネルギー源になります。大腸が必要とするエネルギー量の約60~80%は、腸内常在菌が作る、この酪酸でまかなわれていると言われています。

大腸の粘膜上皮には、水分・ミネラルの吸収や、バリア機能を担う粘液の分泌といった機能があり、大腸が正常に機能するには、酪酸が非常に重要な役割を担っているのです。



主要な短鎖脂肪酸の有用性


(1) 酪酸:

・小腸の繊毛運動、大腸のぜん動運動を活性化

・腸管粘膜の傷を修復、粘膜物質(ムチン)の分泌を促し、大腸を保護

・大腸細胞の異常な増殖を抑え、大腸癌の発症を抑制

・腸管ホルモンであるGLP-1の分泌を促しインスリン分泌を正常化(インクレチン効果)し、糖尿病改善

・腸管ホルモンであるGLP-1やPYYを分泌させ、脳に作用して過食を抑制

・過剰な免疫反応を抑えるTレグ細胞(制御型T細胞)という免疫細胞を増やす効果


(2) プロピオン酸:

・ Tレグ細胞(制御型T細胞)に作用し、腸管粘膜でのTレグ細胞の維持に寄与することで、大腸炎抑制に効果


(3) 酢酸:

・腸内pHバランスを酸性にし、有害菌を減らす

・大腸腸管上皮細胞のバリア機能を高め、病原菌の腸管感染症を予防

・食欲抑制効果

*(1)-(9)



短鎖脂肪酸は、場合によっては人間の20%以上をまかなう重要なエネルギー栄養素で、細胞に取り込め、且つ脳血管関門を通過し、脳まで届くこともできるエネルギーでもあります。*(10)(11)



出典:

*(1)「健康増進に寄与するルミナコイドとしてのれジスタントスターチの働き」醸協108(7):483-93(2013)

*(2)「プレバイオティクスから大腸で産生される短鎖脂肪酸の生理効果」腸内細菌学雑誌16(1):35-42(2002)

*(3)「短鎖脂肪酸の生理活性」日本油化学会誌46(10):1205-12(1997)

*(4)「食事由来腸内細菌代謝産物、短鎖脂肪酸と宿主代謝制御」脂質栄養学24(1):33-40(2015)

*(5)「メタボロゲノミクスによる腸内エコシステムの理解と制御」生化学88(1):61-70(2016)

*(6)「発酵性食物繊維としてのフラクトオリゴ糖の医療用食品への適用」腸内細菌学雑誌 16(1):43-54 (2002)

*(7)「新たな臓器としての腸内細菌叢」日消誌112:1939-46(2015)

*(8)「腸内細菌によるエピゲノム修飾を介した腸管制御性 T 細胞の誘導機構 」腸内細菌学雑誌 31 : 15-22(2017)

*(9)矢沢幸平,南善宏,田村善蔵「腸内フローラと食物因子」学会出版センター東京15(1984)

*(10)公益財団法人腸内細菌学会ホームページ用語「短鎖脂肪酸」

*(11)「特集:脳神経系と腸内細菌叢 Microbiota 脳機能と腸内細菌叢」腸内細菌学雑誌 31 : 23-32(2017)